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免税制度改正とは?2025~2026年の変更点や事業者の対応を解説

2026年11月、免税制度は「購入時免税」から「リファンド方式」へ全面移行します。制度開始日には移行期間が設けられず、その日以降は現行の「購入時免税制度」は適用されません。しかし、「詳しい内容はまだ把握していない」「何から着手すべきか分からない」という方もいるでしょう。

当記事では、免税制度改正とは何か、2025~2026年の変更点、施行時期と実務影響、店舗運営側が今から準備すべき対応策を解説します。免税販売を継続・強化したい小売店などの店舗責任者の方は、ぜひ参考にしてください。

1. 免税制度改正とは

免税制度改正とは

免税店とは、外国人旅行者などの非居住者に対し、所定の方法で物品を販売する際に消費税が免除される店舗のことです。免税販売には店舗ごとの許可が必要で、対象者・対象物品・手続きが法令で細かく定められています。免税対象商品は、家電製品・靴・財布・洋服・着物・時計・宝飾品・民芸品などの一般物品と、食品・酒類・化粧品・香水・医薬品などの消耗品に大別されます。

 

こうした免税制度について、2024年12月に公表された2025年度税制改正大綱で見直し方針が示され、2025~2026年にかけて制度の一部が段階的に改正されることになりました。制度を悪用した不正防止、現場オペレーションの負担軽減、旅行者の利便性向上を目的として、複数の変更点が盛り込まれています。


(出典:観光庁「免税店とは」/https://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/about.html

2. 免税制度はどう変わる?2025~2026年の主な変更点

免税制度はどう変わる?2025~2026年の主な変更点

ここでは、2025~2026年に予定されている免税制度改正の主な変更点を整理します。リファンド方式の導入をはじめ、消耗品の上限・特殊包装の廃止、高額品に関する情報提供義務化、別送廃止、購入者確認手続きの見直しなど、店舗運営に直結する変更点を順に解説します。

 

(出典:財務省「令和7年度税制改正の大綱」/https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/20241227taikou.pdf

(出典:国税庁「輸出物品販売場制度は令和8年11月からリファンド方式に移行します」/https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/pdf/0025003-110_01.pdf

 

2-1. リファンド方式の導入(免税方式の見直し)

2026年11月1日から免税販売方式は「購入時免税」から「リファンド方式」へ移行します。リファンド方式では、免税店は免税購入対象者に対し、まず消費税額を含む税込価格で販売します。購入者は購入日から90日以内の出国時に旅券などを提示して税関の確認を受け、その持出しが確認されたデータ(税関確認情報)が免税店側に共有されます。

 

免税店事業者は、購入記録情報と税関確認情報を保存することを要件に免税の適用を受け、その後、確認済みの購入者に消費税相当額を返金(リファンド)します。この仕組みにより、持出し不備や制度悪用を抑止しつつ、免税の適正運用を図る狙いがあります。

 

2-2. 消耗品の購入上限額・特殊包装の廃止

リファンド方式への移行に合わせ、免税対象物品の区分と要件も見直されます。現行制度では「一般物品」と「消耗品」に区分され、消耗品のみ1日50万円の購入上限と特殊包装が義務付けられていました。改正後は一般物品と消耗品の区分自体が廃止され、税抜5,000円以上であれば用途を問わず免税対象となり、特殊包装も不要となります。


併せて「通常生活の用に供さないもの」という除外要件も撤廃される一方、金・白金の地金や金貨など不正利用リスクの高い物品は免税対象外として個別管理されます。外国人観光客にとっては利便性が向上し、店舗側の包装・事務負担も軽減される改正内容です。

 

2-3. 高額免税品(税抜100万円以上)の情報提供義務化

改正により、税抜100万円以上の高額免税品を販売する場合、購入記録情報として「物品を特定できる詳細情報」の提供が義務化されます。具体的には、名称・ブランド名・型番・色や形状などの特徴または鑑定書・保証書の有無などを組み合わせて記録し、腕時計などシリアル番号が付与された商品はその番号も必須となります。


任意項目として「商品分類」「販売場名称(英語)」欄も追加されますが、分類設定が不十分な場合、空港で免税購入者が税関確認を受けられないリスクも生じる点には注意が必要です。制度適正化と不正防止の観点から、店舗側には記録精度の引き上げが求められます。

 

2-4. 免税店以外からの海外発送(別送)の廃止

免税店以外からの海外発送(いわゆる「別送」)による免税取扱いは、リファンド方式への全面移行を待たず、2025年3月31日をもって廃止されています。2025年4月1日以降に購入した免税対象物品は、出国時に購入者が現物を携帯していなければ税関確認を受けられず、消費税が徴収されます。


一方で、免税店で購入時にその場で運送契約を締結し、商品を運送事業者へ引き渡す「直送制度」については、今後消費税法7条の輸出免税として適用され、免税販売手続きや購入記録情報の送信は不要となります。

 

2-5. 免税購入者確認手続きの見直し

免税対象者の確認手続きも見直されます。まず、船舶観光上陸許可等による入国者については、従来の許可書に加えて旅券の提示が必須となり、購入記録情報は許可書番号ではなく旅券番号で登録します。


また、日本国籍の非居住者については「国外に2年以上居住」の確認書類として、従来の在留証明・戸籍の附票に加えマイナンバーカード(国外転出記載あり)が利用可能となり、本籍記載は不要となります。購入記録情報としては「証明書類の種類」と「国外転出日」の2項目のみ送信すれば足り、証明書類そのものの写し保存も必要ありません。

 

 

 

 



3. 免税制度改正のスケジュールと今後の展望

免税制度改正のスケジュールと今後の展望

別送廃止のみ2025年3月31日で先行実施済ですが、免税制度改正の中心であるリファンド方式は、2026年11月1日以降の免税店における免税対象物品の譲渡から適用されます。移行期間は設けられておらず、現行制度と新制度の併用は認められません。つまり、2026年11月以降も免税を適用し続けるには、制度開始日までにリファンド方式へ対応しておく必要があります。今後の予定としては、まず2025年11月頃に国税庁より免税販売管理システムの仕様書が確定版として公表され、その内容に沿ってシステム改修や店舗オペレーションの変更を準備するフェーズに入ります。

 

今回の改正は、脱税や持出し不履行などの不正防止と制度の透明性向上を目的としたものですが、小売事業者にとっては法対応を超えて業務全体の見直しを促す契機となります。販売・会計・接客・裏側の業務プロセスまで含めて抜本的に再検討し、免税サービスの分かりやすさ・安心感・手続きの簡便性も含めた設計が、訪日客から選ばれる店になれるかどうかを左右するでしょう。システム刷新やベンダー選定、スタッフ教育、説明ツール整備などは一度で完了しない工程であるため、2025年の仕様確定や制度変更を待ってから着手するのではなく、今の段階からロードマップを設計し、現状の棚卸しと優先度づけを始めることが重要です。


(出典:国税庁「輸出物品販売場制度は令和8年11月からリファンド方式に移行します」/https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/pdf/0025003-110_01.pdf

4. 事業者が押さえておくべき免税制度改正への対応策

新制度開始直後は、免税制度改正を知らない旅行者から現場で質問や指摘を受ける可能性が高く、説明不足がクレームにつながる恐れがあります。制度理解・会計処理・接客体制の3点を最低限押さえて対応方法を準備しておきましょう。

 

■制度説明の準備(FAQ・掲示・多言語)

購入時は税込価格で、出国確認後に返金される仕組みであることを明示し、不当値上げとの誤解を防ぐ必要があります。そうしたことを理解してもらえるよう、店頭掲示・FAQ・翻訳対応を整備しましょう。

 

■店舗オペレーション・会計処理の見直し

免税販売は一旦課税売上として計上し、税関確認後に免税売上へ振り替える必要があります。期跨ぎ・返金不能時の会計処理、勘定科目の分離、キャッシュフロー管理を見直すことも求められます。

 

■システム・人材・外部委託の整備

新制度開始後は、免税販売管理システムとのAPI連携が必須条件となり、未対応の場合は免税販売が困難になります。返金業務は承認送信事業者への委託も選択肢に入れましょう。また、制度改正は責任者だけでなく、現場スタッフ全員で理解・運用できるよう教育することも大切です。

まとめ

免税制度改正は、購入時免税からリファンド方式への全面切り替えにより、手続き・会計・顧客対応がすべて変わる制度改革です。対応が遅れると、税務リスクだけでなく、現場での説明不足によるクレーム発生、決済・返金処理の混乱につながります。改正後の免税手続きを正しく理解し、手順・会計・店頭案内を先回りして整えることで、訪日客に選ばれる免税店を目指せるでしょう。

 

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